and I'll believe in you until the day I die.

映画とミリタリについて書かなかったり、たまに書いたりする。ドイツでネギとニンニクを食べ続ける実験をしている。

むずかしーい中2英語

ある映画のタイトルが日本で発表された時から僕にはふと思っていることがあったんですよ。

 

www.youtube.com

 

映画「ダウンサイズ

 

中学の!

 

中学2年の!

 

中学2年生までの英語をマスターしている人であればこのタイトルの何がおかしいか、すぐに分かるはず。

 

ちなみに、原題は"Downsizing"

 

そう

 

動名詞が動詞にされてる!!!

 

邦題は「ダウンサイジング」という動名詞ではなく、「ダウンサイズ」という動詞

いや、別に動詞の(命令形の)タイトルが問題というわけじゃないです。念のため。

映画の原題にだって"Don't be afraid of the dark"があるし「生きる」があるし、それどころか"I kill Giants"や「桐島、部活やめるってよ」みたいな短文じゃん!ってタイトルもある。

 

ただ、このタイトルを見た瞬間、僕の心の奥底では「もしかして、日本の映画配給会社は動名詞(中2英語範囲)が苦手???」って気持ちが生まれてしまったのです。

 

ちなみに、この映画「ダウンサイズ」、実は結構社会風刺的な内容でラストにも明確なカタルシスが無いので、いまいち受けが悪かった(私見)ですが、マット・デイモンのくたびれたけど人のいいおっさんという彼の中年以降の役柄を完成させた感があるし、風刺も光るものがあって、僕は好きです。

あと、ニール・パトリック・ハリスが出てる。「スターシップトゥルーパーズ」のサイキック士官カール・ジェンキンスだった人です(誰得情報)。

 

 

それでまぁ、時は流れてこの新型コロナウィルス騒動。ドイツも結構大変ですし、僕も仕事は無くなるわ、プラモ屋は休業だわで大変なんですが、それはさておきようつべで日本のニュースを観ていたら

 

密です 密です 密です 密です 密です 密です

密密密密密密密密密密みみみみみみみみみみみみみ

mmmmmmmmmmmm

 

ソーシャルディスタンス

 

ちがーう!!!

これは完全に違う!!!

何で!!!名詞!!!!!!

This is japan navy, this is japan navy! Japan made a Kyoto protocol!

All your base are belong to us!!!!

 

名詞っていうか、動名詞も広義には名詞だけど!

ディスタンスとディスタンシングは意味が違う!!!

 

 

はい。それでは長いこと塾の講師として一応英語を教えて来た人間としては、非常に悲しい事態なので、名詞と動詞と動名詞について解説したいと思います。

ここまで読んでくれていて何が問題なのかさっぱり分からないという方もご安心ください。

カイロ大学を卒業するアラビア語の使い手で、一度は防衛大臣まで務めた国家を代表するレベルの人間が理解できない程の非常に難解な英語の話ですので、分からないのも仕方がありません。

 

1) 英語の名詞と動詞

まず、これは英語の抱える根本的な問題の1つですが、英単語には名詞と形を同じにしたまま動詞として使えるものがあります。

 

例えば、doctorという単語は、「医者」という名詞としての使い方の他に「〜を診察・治療する」という動詞の意味もあります。

なので、A doctor doctors another doctor.(医者が他の医者を診察する)という文も作ることができます。

 

このややこしさは(ある界隈では)有名で

If one doctor doctors another doctor, does the doctor who doctors the doctor doctor the doctor the way the doctor he is doctoring doctors? Or does he doctor the doctor the way the doctor who doctors doctors?

(もし、ある医者が他の医者を診察するなら、その医者を診察している医者は彼が診察している医者のやり方でその医者を診察しますか?それとも、彼はその医者を医者を診察している医者のやり方で診察しますか?)

というクソ文章があるくらいです。

 

distanceもこれに該当します。というか、英語はクソ言語なので大体そうです。

distanceを名詞である「距離」という意味で覚えている人は多いと思いますが、その他にも「〜を遠ざける、距離を置く」という動詞としても使うことができます。

 

2) 英語の動詞と動名詞

また、「〜する」という動詞を、その語尾にingをつけることで、「〜すること」という意味の名詞にすることができます。

これが動名詞化。

つまりボーイング社の社名以外で、語尾にingがついた単語が動名詞です。

 

~ingには現在分詞(現在進行形はこれの使い方の一種)という使い方もありますが、お前にはまだ早い。

 

3) 3行でまとめて

  • 名詞のdistanceは「距離」
  • 動詞のdistanceは「距離を置く」
  • 動名詞のdistancingは「距離を置くこと」

 

この3つはどれくらい違うのか。

 

正直、品詞に目をつぶればそこまで違くはない。ただ、右に置いた各々日本語訳と同じくらいの違いはある。

 

つまり、日本語で「距離」と言った場合、基本的にその距離ができた原因などではなく、距離そのものに注目されている。

一方で、「距離を置くこと」と言った場合、結果としての距離ではなく、その行為自体に注目している。

 

これが、今回の「ソーシャルディスタンス」で問題だったところです。

今回は、新型コロナウィルスの蔓延のリスクを減らすために、各々が「距離を置くこと」という行為が重要であり、それを強調している語なので、動名詞であるディスタンシングを使う必要があるわけです。

 

ちなみに、ドイツ語だとそれぞれ

die Entfernung

entfernen

das entfernen

で明確に違います。分かりやすくて良いですね。

ドイツ語は他のところがクソです。

 

重箱の隅をつつくような瑣末な言いがかりと思う人もいるかもしれませんが、正直言って相応に不自然な英語であり、これを首都の首長やマスコミが何の疑いもなく用いてしまうところに、日本で英語教育が実を結ばないと言われる根源的な原因を感じてしまうわけです。

 

要は偉い人にセンスが無いんだよな

 

4) 実はアレが命令形の変形だった可能性

socialが形容詞なので、無いですね。