and I'll believe in you until the day I die.

映画とミリタリについて書かなかったり、たまに書いたりする。ドイツでネギとニンニクを食べ続ける実験をしている。

「三体」1~3部読了と感想

先日、「三体 死神永生」を読み終えた。

まだ「三体 0」と外伝の「三体 X」は読んでないけど、とりあえず本編は読み終えた。

 

長かった…

 

総合的にはめちゃくちゃ面白いんだけどね。

純粋に文章量が多いというのもあるが、このシリーズは物語が見えるまでにめちゃくちゃ時間がかかるというのもある。

だから、「今読んでるのは何の話なんだ???」みたいなパートが序盤は結構あり、読み進める速度にバラツキが出るのである。

「死神永生」においては、最初のエルサレムの話であり、三体人が作った黄河が舞台の映画の話とかである。

いや、黄河の映画は、その後の程心(チェンシン)と雲天明(ユンティエンミン)の運命を示唆しているし、三体文明の地球への融和政策を描写する一環で出てくるからいいけど、上巻冒頭のエルサレムの話はその現象を読者が解明するのは下巻の後半になってからだし、物語の中では全く触れられることないからな。

 

というわけで、一つずつ簡単な感想。

あ、ネタバレ関係なく、みんな読んでる体です。読書感想文なので。

 

「三体」

過去パートは歴史SFで現代はSFサスペンス。

全てはここから始まった…けど、繰り返しこればっか映像化されてるので、個人的に若干飽きてる。作中のVRゲーム「三体」がよく褒められているが、ゲーマー的にはゲームルールが明確でないため、そこがノイズとなり、それ自体が面白いとはあまり思えなかった。三体世界の描写は面白いんだけどね。

あと、自分は中国の歴史も何もほとんど門外漢なので、ドラマでも小説でも過去パートやよく分からない地名や料理が出てくるところが興味深くて、最近は友達と中華料理や過去の中国文化をよく漁るようになった。

 

「三体II 黒暗森林」

今度は戦争だ!

上巻は、羅輯(ルオジー)ら国連によって選出された三体文明と頭脳と策略で戦う面壁者と三体文明に忠誠を誓う人間、破壁者の頭脳バトルだが、下巻の未来パートからは宇宙戦争SFへと様相を一気に変える。

俺はこの宇宙戦争準備SFと宇宙戦争SFなところが物凄く好きで、この第2部を一番評価してる。

黒暗森林理論に基づいて、広大な宇宙における安全保障を確立するオチも、壮大なスケールで度肝を抜きつつ、その思想自体は現実世界に落とし込めるという絶妙な塩梅も何ともSFっぽくて好きだ。

また、小説の内容とは別に驚いたのは、終末決戦におけるそのスピード感溢れる筆致。

第1部、第2部も、それまで割かし静かで知的なSFという感じで書かれてきたのに、終末決戦が始まった途端に、文章が一気に躍動感に満ち満ちたものになる。

まぁ、これは訳者や編集の力なのかもしれないけど、この変化に驚きつつめちゃくちゃ楽しめた。

というわけで、俺は「黒暗森林」が一番好き。

 

「三体III 死神永生」

Twitter読書メーターでも既に言っているが、「三体」がSFサスペンス、「黒暗森林」が宇宙戦争SFなら、この「死神永生」はコズミックホラーだよ。

物語は「ミスト」であり、「火の鳥」であり、「2001 夜物語」内の1エピソード「愛に時間を」なんだけど、とにかくこの「三体」宇宙の規模的にも時間的にもデカ過ぎるスケールの話が展開される。

この宇宙には人智を超えた技術と歴史と規模と宇宙的倫理観を持つ文明が存在し、それらの戦争の影で、地球文明や三体文明のような「弱い」文明は宇宙が終わるその日まで身を隠し続けるしかない…

これはもうコズミックホラーだろ。

ラブクラフトが望んだものかは分からんけど。

まぁ、とにかく、規模感が凄い。そのあまりのスケールの話に、第2部までの三体シリーズを含め今までの全てのSFがちっぽけに見えてしまうほど。

…一方でこの「死神永生」は今まで一番物語のペース配分というか展開の重みが偏っている。

最後など、明らかに作者がSF描写に夢中になりすぎて登場人物たちの人生が隅に追いやられている。

物語のペース配分が偏ってるのは「三体」シリーズ全てにおける特徴ではあるし、数百万の文明が宇宙で生き残り宇宙の時間的果てに行き着いくスケールの物語において個人などというのはあまりにもちっぽけなものだけどさ。

文字通り宇宙と時間を跨いだ関係を築いてきた程心と雲天明らの最後の心理描写くらいもうちょっとやってくれても…と思った。

 

そういうところも含めて、まさに「愛に時間を」なのであった。